普通に人としての権利が認められるということが、どういうことなのか。沖縄に住んでいると、沖縄の人々にはそのような権利が保障されているのだろうかという疑念をぬぐえません。理不尽な政策が国の立法や司法によって、正当化され、そして政府によって次々と実施されていきます。
ごく当然に人としての権利を保障されて生きていきたいと願う心は、沖縄に住む人々の歴史的な体験や現実の問題から紡ぎ出される素直で素朴な願いと言えるのではないでしょうか。そのような願いこそが沖縄の人々の歴史を創造していく主体性の基盤です。軍事占領下の構造的な暴力を受け、植民地のような沖縄の状況においてこのような願いを叶えるためには、決して絶望せず決してあきらめず、粘り強く、歴史と現実の批判的検証を通して自ら主体生の回復を図り、さらに現実と未来への働きかけていく努力を一歩一歩していくしかないと思います。
そのため、人権とは何か、より世界的普遍的な視野で明らかにしていくことが求められます。日本の立法・司法・行政の基準では人権侵害とされない大きな人権侵害が沖縄にはあります。まず、それを国際的な人権基準により明白につかみとっていくことです。第二に、この国際的な人権の基準をもって、沖縄の客観的な現状を示し、国際社会に訴えていくことです。
これまで、沖縄の市民運動では、第一に、アメリカ政府及び議会、司法等のこれまでの環境の権利義務に関する情報を収集し、報告書を作成し、環境系の政府機関、連邦議会議員、議員補佐官、環境NGO,市町村議及び議会、労組に、米の取り組みの改善について具体的に提言する作業、 第二に、国連の人権諸機関、人権理事国代表、人権高等弁務官事務所担当事務職員等に、米軍と日本政府が侵害している沖縄の環境権、表現の自由(集会の自由、報道の自由)、自己決定権、女性の権利等の、国際人権法及び国連諸機関の勧告等に基づいて、具体的な侵害の状況を明らかにする報告書を作って送付し、 また具体的に説明する機会を作ってきました。
これは、沖縄の客観的な情報をもとに、それを国際的な人権基準を当てはめ、人権侵害を論理的に立証していく準備作業が、極めて重要になります。これまで、国際人権法の専門家が一人もいない沖縄で、この準備書面を作成することに非常に苦労してきました。また、この専門的な知識の蓄積と継承も、沖縄の大きな財産となるにも関わらず、あてになる取り組みがまったくない状況でした。
今回、沖縄国際人権法研究会の設立を呼び掛けるのは、このような国際人権法による沖縄の人権問題の探求とその成果を生かした国際社会への訴え、そしてその成果の蓄積と若い方々への継承のためです。なにとぞご理解の上、ご参加くださいますようお願い申し上げます。
2016年2月20日
共同呼びかけ人:高里鈴代、星野英一、島袋純、若林千代、阿部藹、眞栄田若菜